2026年9月、税務署のシステムが25年ぶりに変わります
税理士の森田です。
今年の9月、国税庁の基幹システムが約25年ぶりに全面的に入れ替わります。
「KSK2(ケーエスケーツー)」と呼ばれるこの新システムは、税務署の内側の話なので、経営者の皆様が直接触れるものではありません。
それでも、申告書がどう読まれるかが変わるという意味で、知っておいて損はない話だと思っています。
KSK2とは何か
現在の「KSK(国税総合管理システム)」は1995年に導入が始まり、2001年から全国で使われてきました。申告や納税のデータを一元管理してきた、税務行政の土台です。
導入から四半世紀が経ち、この土台を全面的に作り替えるのが「KSK2」です。
本格稼働は2026年9月24日を予定しています。なお、一部の機能については段階的にリリースする方向で調整が進められています。
まず、よくある誤解をひとつ
「AIが税務調査をするようになる」という言い方を目にすることがありますが、これは正確ではありません。
KSK2はあくまでデータを扱うためのシステムです。AIが調査先を決めるわけではありません。
ただし、土台が整うことでデータ分析との連携は確実に深まります。
「AIが調査する」のではなく「分析しやすいデータが揃う」。ここが本質だと思っています。
何が変わるのか
経営者の立場から押さえておきたいのは、次の3点です。
1. 紙で出しても、データとして読まれる
AI-OCRという技術で、書面で提出された申告書も文字を読み取ってデータ化されます。つまり、電子申告か紙かにかかわらず、申告内容が分析の対象になります。「紙だから細かく見られない」という時代は終わります。
2. 税目ごとの縦割りがなくなる
これまで法人税・消費税・所得税などは、税目ごとに別々のデータベースで管理されていました。KSK2ではこれが統合されます。法人の数字と社長個人の数字を、横断して照らし合わせることが容易になるということです。
3. 調査に回せる人手が増える
2026年度中に、全国すべての税務署で内部事務のセンター化が予定されています。書類処理を集約して効率化し、そこで生まれた余力を税務調査やデータ分析に振り向ける方針です。調査の件数・精度の両面に影響してきます。
実務的に見ると、売上の計上日と請求日・検収日のずれ、役員に関わる費用の按分根拠、外注費や原価の異常値といったところが拾われやすくなると考えられます。いずれも「悪意があるかどうか」ではなく、説明がつくかどうかの問題です。
今から、何をしておけばいいか
身構える必要はありません。やることはシンプルです。
ひとつめは、証憑をデータで残すこと。請求書・領収書・契約書を、後から検索できる形で保存しておく。調査の場で「これはどういう取引ですか」と聞かれたときに、すぐ出せるかどうかで所要時間がまったく変わります。
ふたつめは、記帳をクラウドに寄せること。データが会計ソフトの中で完結していれば、月次の数字も早く固まります。
みっつめは、自社の申告内容を一度見直すこと。毎年なんとなく同じ処理を続けている項目があれば、根拠を確認しておく。これが一番効きます。
制度対応を「体制づくり」に変える
ここまで読んで、「また面倒な対応が増えるのか」と感じられたかもしれません。
私はむしろ、良い機会だと思っています。
証憑がデータで揃い、月次の数字が早く固まる会社は、税務調査に強いだけではありません。
銀行に説明ができ、来期の計画が立てられ、いざ事業承継の話になったときにも自社の姿を数字で示せる会社になります。KSK2への対応は、そのまま5年後10年後に効いてくる体制づくりと重なります。
制度に合わせるための作業ではなく、会社の未来をつくるための投資として捉えていただけたら。
そう考えると、少しワクワクしてこないでしょうか。
最後に
当事務所では、クラウド会計への移行や証憑のデータ化について、実際の運用に落とすところまで一緒に進めています。
「何から手をつければいいか分からない」という状態からで大丈夫です。今の記帳の流れを見せていただければ、どこを変えると一番楽になるかをお話しできます。
9月まで、まだ時間があります。
追われて対応するのではなく、余裕をもって整えていきましょう。伴走者として、お手伝いさせてください。
参考資料
本記事の内容は、以下の公的機関の公表資料に基づいています。
制度の詳細や最新の情報は、各リンク先の原典をご確認ください。
※ 本記事は2026年6月時点の公表情報に基づいています。稼働時期や機能の詳細は変更される場合がありますので、最新情報は国税庁の公表資料をご確認ください。